ニュースレターとしてリニューアルします

おしゃれでクールな我々は、実証性や客観性を軽視する反知性的な態度とそこに肥大するナルシシズム、これらの渦巻くインターネットに別れを告げ、ニュースレターとして生まれ変わります。

ももこ:何か購読してるニュースレターってあるの?

松田:ない。

ももこ:ないんかい笑 でもなんか流行ってるよね。

松田:そう、今ならまだギリギリ。これ2年前に言い出してたら感度バリ5って感じやったと思うけど。

ももこ:ニュースレターか。なんか海外の Harper's BAZAAR って雑誌で、今はもう偉いエディターをしてるレイチェルさんって人がいて、その人が Opulent Tips っていうニュースレターをやってるんだけど。

松田:はいはい、レイチェル…さん?

ももこ:それは招待制で、たまに「今から5分以内にリプライくれた人は登録しておきます」みたいなのをやってんだけど、基本的にはすごくエクスクルーシブで、私もまだ登録はできていない。

松田:へー。

ももこ:それがいいって Tweet してる人はたくさんいて、そのニュースレターは入りたい。

松田:なるほどね。

Gone are the decadent pronouncements and in its place are less prescriptive bits of wisdom meant to encourage an exploration of personal taste. (“NOW IS THE TIME TO DEVELOP YOUR OWN INTERESTS! We are entering a period of BIG TASTE!” writes Tashjian.)

Opulent Tips について紹介する FT の記事の引用ですが、非常に素敵なことを言っていますし、様々なニュースレターに通底するものとして、上記のような価値観は確かにあるような気がします。

ももこ:Opulent Tips って調べただけで「リストに入れてもらえた」みたいなツイートが出てくる感じ。commmon のニュースレターは有料でやるの?

松田:うーん、迷ってる。まあ commmon を無責任な趣味でやるつもりはもうないからね。とりあえずはまだ commmon を忘れないでいてくれている人を招待して、できることから始めていこうかな。

ももこ:じゃあもう早々に配信は始めるんだ。

松田:せやね、準備ができ次第ね。

2023年1月8日
Aux Bacchanales 紀尾井町


河東:メルマガ?

松田:まあせやね。ニュースレターかな。

河東:ニュースレターとメルマガっていうのはまた違うの?

松田:外形的には一緒やね。ただ、コンテンツを受け取っている人が経験している内容はかなり違う気がする。

河東:はいはい。

松田:その違いがどこから生まれているのかは…おれもまだうまく説明できないな。

いわゆるブログが、検索流入する不特定多数、あるいはよくても定期的にフェッチしてくれるファンに対してばらまきのように一方的に発信されるのに対して、ニュースレターの場合、仮にもメールアドレスを登録して購読してくれた人に対して、定期的にプッシュで配信するという違いがあります。メルマガは外形的にはニュースレターと同じであったとしても、前者のような了解のもとにあるような気がします。

この構造的な違いによって、その発信が誰のどういう期待に責任を負うかという点がはっきりすることで、ニュースレターで配信する/される側のコミュニケーションには明確な手触りが生まれているのではというのが今のところの見立てです。

もちろんこのようなコミュニケーションは、既存のプラットフォーム上でも必ずしも実現不可能なものではありませんが、それらがプラットフォームである以上数の論理に巻き込まれることは不可避で、それによって十分な発信の前に疲弊してしまうことがほとんどだと思います。

河東:ニュースレターってどうやってお客さん増やしてるん? 無料でも何回か見られるとかなん?

松田:うん。例えば…10本配信されるうちの2-3本は誰でも見られるとか、フリートライアルがついているとか、あとはもう完全に有料やけどリファーラルで広がるとかね。

河東:あー、なるほどなるほど。

情報発信をするにあたってSNSにもサーチエンジンにも頼らず、まして中身も分からないものに初めから課金させるなど、ラディカルを通り越して正気の沙汰ではないと思うかもしれません。しかしそれは、ユーザーとコンテンツをn分の一に矮小化する見方を前提にした場合であり、ユーザーとコンテンツをその個別具体性において捉え直しさえすればその限りではありません。

統計的に一般化されたユーザーが確率の問題として特定のコンテンツを消費しているという考え方では、100万人に見られないとペイできないビジネスモデルと1%の大当たり、そしてその陰で捨てれられる、大当たりと本質的に違った点のない99%のコンテンツしか残りません。しかし、そこで幸せになれるのは1%を当てた人だけ、あるいはその人でさえも、自身のしたのと同じようにして多様性の損なわれた中から何かを選ばなければならないという点において、もはや幸せは約束されていないのかもしれません。

Amazon.co.jp

個別具体的なユーザーやコンテンツをポートフォリオの一部としてではなく、それ自体が目的であると捉え直すことで、1万人のみを相手に、99%を捨てなくても済むモデルを実践することができるのではないでしょうか。このとき誰も不幸にならないのは言うまでもありません。

中垣:でもわざわざ違う名前がついてるってことは、やっぱちゃうってことなんやろうね。

松田:うん。やっぱりこう…数が全てっていう、2010年代インターネットの消耗戦を経験した後のアンチテーゼ的なところはあるから、そこからくる毛色の違いはあるよね。

河東:うんうん。

松田:全く知らんけど、メルマガにおける発信者と購読者の構造って SNS とたいして変わらへんと思うねんな。知らんけど。

中垣:確かにね。メルマガのお客さんが期待してるものもそういう感じやろうしね

松田:そうそう。ほんでまあ…ほんまは今週末にローンチする予定でおってんけど、もうちょい丁寧にコミュニケーションとったほうがええかもな、とか思って。

中垣:まあそれはそうやな。

松田:それは全体に対してもやし、あとはこれまで個別に連絡くれた人にも、ちゃんと伝えておこうと思って。

河東:ふーん。

松田:なんやろう…なんかマインドが結構ちゃうねん。今までは自分達が第一のクライアントやったから好きなようにやってたけど、それやとずっとは続けられへんし、コミュニケーションを取れる相手も限られるし、社会に対して十分な効力感を持てる感じもないし…ってなったときに、やっぱ誰にどういう価値を届けるのか、そのためにしなければならないこと、したほうがいいこと、しなくてもいいのにごく個人的な動機でコストを割こうとしていることはなんのか、そういうことをきちんと整理せなあかんなと思って。

中垣:はいはい。

松田:そうなるとさ、自分以外にとってはどうでもいいディテールに凝らなくなった一方で、この導線はミスリーディングだなとか、そういうことが今度は無限に気になってきて。

河東:なるほどね。

松田:しかも最終的にAとBの二択になったとき、今までなら自分のバイブスで決めて「そのときおれがそう思ってんから」って言ってればよかってんけど、今はちゃうわけよ。どういう選択をしても、最後は結果でテストされるわけ。そういうことを考えると超しんどいね。今までとは全然違う感覚やわ。

河東:ふーん。

松田:だから、来月すぐに売り上げが立たなあかんわけではないけど…でもそういうことも考えなあかんねん。フリープランがあるのか、フリートライアルをつけるのか。てか今まで応援してくれた人に対しての義理立てはどうすんの? 最初数ヶ月は全部無料にして、そこから全部有料に切り替えるの? どれでもええねんけど、でもどれかにせなあかんし、その選択は結果によってのみ評価されるねん。この場合の結果っていうのは、一年後に commmon に対価を払うだけの価値を見出してくれるのは何人おるんかってことやんね。

中垣:決めんのって難しいよね。

松田:そうやねん。結果に責任を負うのは自分やから、最後は自分が決めるしかない…でもその結果は他人が決めることやねん。おれがどう思うかじゃない。

中垣:そうやんね。

松田:ほんでさ、昨日全体にアナウンスしたやん? あれに対してみんなが好意的にレスポンスしてくれているであろうことは分かるねんけど、それが怖くて逆に見られへんねん。

河東:あー。

松田:そら好意的なレスポンスは泣くほど嬉しいけど、それは目指す成果とは…まあほとんど関係ない。

中垣:分かる分かる。

松田:今後ほんまに読んでくれて、いずれは対価を払ってくれるのか。それが全てやねん。

中垣:だから…うん、それはそうやんね。

松田:だから見られへん。どれだけ好意的でも、それを見てどんな気持ちになったらええんか分からへん。それだけでは何にもならへんねん、結果が全てやねん。

中垣:部屋借りるときも思ったよ。

ひかる:でもいいですよね。ニュースレターやるんだって、そこはちょっとおもしろかったです。

松田:今年のうちに有料購読者1000人まではいきたいな。

中垣:結構やね。

松田:でもまあいけるんちゃうかな。

河東:いくらにすんの?

松田:分からん、まあ最初は5-6ドルやな。

中垣:だいたいそんなもんなん?

松田:もっと高いのも安いのもあるけど、まあ妥当な額ではあると思う。業界の相場って感じ。

中垣:はいはい。

松田:でも途中で値上げしてはいくよ。いずれは20-30ドルとってもいいと思われるようなものにしたいね。

ローンチ後の少なくとも最初の3ヶ月は全て無料で配信し、その後上記のプラン体系に切り替えることにしました。新しくなった commmon が3ヶ月後みなさまにジャッジされること、心から楽しみにしています。

また新規のサブスクリプションについては継続的な値上げを予定していますが、一度開始したサブスクリプションを継続する限り、課金開始時の価格から途中で値上げされることはありません。

ひかる:どれくらいの頻度で配信する予定なんですか?

松田:週2やな。月曜と金曜の19時に配信するよ。

河東:すげーな。

ひかる:記事はたまってるんですか?

松田:もちろん。更新やめてた時期の分はないけど、ここ1-2ヶ月の分はあるで。

ひかる:でもそれ、続けることのタフさも普通にありますよね。

松田:え?

中垣:でもまあそれはずっと続けてきたから。

ひかる:お金取る分のクオリティは担保しながら、更新を続けるわけじゃないですか。

松田:まあ慣れというか…やるって決めたらな。え?

ひかる:いや、まあそういうことですけど。すごいな。

松田:それはやるよ、みんなだって今日の明日で仕事とんだりせんでしょ。

ひかる:途中から参加した人は過去の分は見られるんですか?

松田:見られるようにするつもりやで。きっと一番大事な価値ってそこじゃないしな。ただいずれにしても、しばらくの間は配信済みのものは誰も見られないようにする。ブログみたいな一覧ページはないってイメージでおってほしい。

2023年2月24日
Aux Bacchanales 紀尾井町