#4 人がお金を払う理由…てか一番かっこいい iPhoneってどれなん?
人が金を払うものには3種類、でも実質2種類しかない / お金を稼ぐためのお金と自己実現プレミアム / 買っているのは不動産なんだけども、実際に手に入れているのは給料以外の所得のある自分
もじん:今のジョブ理論の話はね、それが目的化されるような財に関しての話だと一瞬分かりにくいんだけど、サービスの話としての方が理解が簡単になる気がする。
みなと:うんうん。

最近読んだ中ではトップクラスの感動を覚えた一冊。普通に有名だし、これまで読んでいなかったのも自分には遠い分野についてのものだという認識があったからで、別にみんなこれくらいのことは当然知ってるもんなんですか? にしては人から聞いていた内容とは比べ物にならないくらい、レーザーのようにはっきりとした焦点とリーチの広さがあったんですがね? しばらくはこれを聖書に生きます。
もじん:だからね、監査法人とかだってそうだと思うんだよな。別にビッグファームに頼む必要なんて必ずしもないわけじゃん。
松田:てか最近それめっちゃ思うわ。ちょっと脱線にはなるねんけど…今のジョブ理論の話は誠実めな話としてしたけど、よりえぐい話として、人が金を払うものには3種類、でも実質2種類しかないと思ってんねん。これ最近のホットトピックね。
みなと:笑
松田:まずそのうちのひとつは、光熱水費みたいなやつ。
みなと:ないと死ぬやつね。
松田:そう、生活保護でちゃんと払えるようになってるやつやな。ただこれはもう NTT とか東京ガスみたいな話で、おれがお金を稼ぐためには関係ない。無視して大丈夫。
みなと:松田がそういう話すると逆に説得力あるな。
太郎:笑
松田:じゃあ実質2種類が何かっていうと…まずはそれにお金を払えばもっとお金が稼げる何かやね。極端な話、倍になって返ってくるのであれば借金してでもお金を出す、まあ当たり前やん。つまりお金を稼ぐためのお金やな。
みなと:はいはい。
松田:もうひとつが、ここ最近ずっとテーマになってる自己実現プレミアム。
みなと:あー…
松田:プレミアムって言ってる通り、ほんまは必要ないはずなんだけれども、自己実現のためであればそのプレミアムを支払う人はたくさんいるねん。それは別に服を買うとかだけじゃなく、営利のためにやっているはずの仕事の場面でも、実際的な集客にはつながりそうにない、かっこええだけの広告打ちたがる人だっておるやん。
太郎:はいはい。
松田:お金を稼ぐためのお金と自己実現プレミアム、この2つしかないと思うよ。
じゃあ自己実現プレミアムを排除したとしてそこには何が残るのか、これは当然の話であって、どうせ死ぬのであれば人生に意味はないみたいな話にも通じるところだと思います。ここで言いたいのは、排他的に重要な目的を忘れて気づかぬうちにしょうもないプレミアムを支払うことがあってはならないというだけの話で、それが最も重要な場面においては、全くのフェアプライスとしていかなるコストも払われてしかるべきだと思いますね。
もじん:難しいのは2つ目と3つ目が重なる場合があるんだよね、たぶん。
松田:あー、うんうん。そこなんですよ。
もじん:つまり、司法試験の勉強のために予備校に100万円払っているっていうのは、虚栄心を満たしているとも言える一方で将来への投資だとも言えるわけじゃない。
松田:うんうん。
もじん:あとは不動産投資をやっている人、あれも結局、自分は不動産投資ができる世の中の上位何%のサラリーマンだっていう虚栄のためにやっているところがあるでしょ。
太郎:いや、そうだね。それは分かりやすいな。
もじん:買っているのは不動産なんだけども、実際に手に入れているのは給料以外の所得のある自分だっていう。もちろんそれが実際に功を奏して資産を増やしている側面もあるから、なかなか一概に言い切れないところはあるんだけどね。
松田:そう、おれもそれをむっちゃ思ってるねん。つまり…ほんまに倍になって返ってくるのであれば誰しもが情報商材を買うし、それを身に着けさえすれば鬼のようにモテるタイガーアイのブレスレットがあれば、そら誰しもが買うに決まってる。

もじん:うんうん。
松田:でもそんなものは実際には存在しなくて、利回りに例えていうとまあよくて数%が相場なわけ。で、そんな不確かな数%のために支出をするのは果たして妥当なのか…このとき、今もじんが言ったようなハイブリッドの構造が効いてくるねん。
太郎:あー、なるほどね。
もじん:そうそう。
松田:だから例えばね…これは本当に例えばなんだけれども、自己啓発的なコンテンツでリファーラルのバックが50%のコンテンツがあれば?
太郎:あー笑
松田:ここで、そもそもコンテンツに価値があると思う気持ちと、2人に紹介すれば元を取れるっていう気持ちとの間を行ったり来たりするのね。
みなと:あー、なるほどね。
松田:その振幅の間で、それに金を出す動機を担保し続けるわけ。どっちかに疑問を持てばもう片方が不足分を担保するようになってるねん。その両輪って大事なんだろうなって。
みなと:相補関係だね。
松田:だからこの両輪を押さえておけば、動機が不十分になることはないねん。
もじん:常に足して100になるっていうね。今の話さ、例えばタレントの飲んでいる青汁をあなたも飲んでみませんか、より長く健康な人生を送ることができますよ、これは2番目だよね。
松田:そうやね。
もじん:つまり投資目的型の消費の仕方だよね。一方で、私はタレントの〇〇さんと同じ青汁を飲んでいると、これは虚栄心による消費の仕方で、仮に2番目の理由で期待したほどの効果がなくても、3番目の理由で納得してもらえるんだよね。これが広告の本質だとおれはずっと思ってる。
太郎:つくづく人間って損をしたくないことが生きるモチベーションになってるなというか…
損失回避
損失回避(Loss Aversion)とは、人々は損失を避けるような意思決定を行う傾向が強いということである。KahnemanとTverskyは同じ額の利得を得るときの喜びに比べて、損失を被る悲しみは2倍であると述べている。損失回避は、授かり効果(Endowment Effect)やサンクコスト効果(Sunk Cost Effect)を説明することができる。
KahnemanとTverskyは1979年の論文で以下のような実験を行っている。
次の2つの選択肢からより好ましいほうを選択させる。
A) 80%の確率で4,000円もらえるが、20%の確率で何ももらえない。
B) 確実に3,000円をもらえる。
同様に、次の2つの選択肢から好ましいほうを選択させる。
C) 80%の確率で4,000円を支払わなければならないが、20%の確率で支払わなくてよい。
D) 確実に3,000円を支払う。
この実験を95人に行ったところ、下記の表のような結果が得られている。
実験の結果、利益獲得局面では確実な選択肢を選び、損失局面では確実な損失を避け、リスキーな選択をして損失を回避しようとする傾向があることがわかる。

もじん:何らかの方法で正当化しようとするっていうのがね、人間の素晴らしくも悲しいところ…でも「あなたも大家になりませんか」なんてね、は?って感じなんだけど。
松田:てかさ、今まで散々ばかにしてきた、iPhone を毎年最新の機種に変えるメンタリティ、普通にコスパ良すぎるよなって逆に最近思ってて。
みなと:まあ売れるもんね。
松田:それもそう、まず普通にリセールがあるしね。あとはさ、買った瞬間に満たされる最新のものにコミットしたっていう感覚もそうだし、なにより毎日それを他人の前で使うわけやん?
みなと:うんうん。
松田:これはもうコスパ抜群というか、その手の自己実現にかかわるジョブがある人にとって、同種の別の選択肢の中ではこれ以上ない解決策のひとつやなと思うねん。それをばかにするのはなんか違うなって。
太郎:なるほどね。
松田:だいたいティム・クックにしたって、同じカテゴリーの中で常に一番いいものを持っていたいという人は存在するみたいなこと言ってて、やっぱそうなんかいとも思うし。
太郎:笑

“I think people are willing to really stretch to get the best they can afford in that category,” Cook said on the call, noting that the iPhone has become “integral” to people’s lives. Consumers now use the device to make payments, control smart-home appliances, manage their health and store banking data, he said.
松田:まあなんやろうな。人のそういう気持ちをばかにはできないというか、その気持ちを前提とするのであれば、現実的には不要な上位機種の存在も無駄ではないというか。そしてなによりその前提は正しいねん…だって事実そうなんだから。賢明な人格を仮定した場合の仮説とかじゃなく、リアルな人間のリアルな気持ちなんだから。
みなと:そうだね。
松田:そう考えるとやっぱり非常にいい解決の仕方だと思う。自分に自信がないならナンパをすればいいとかいうナンパ師おるけど、自信がないならいっちゃんええ iPhone 買っとけとまで思っちゃうよ。
みなと:てか松田なんで 14 Pro なの笑
松田:いやごめんて。これについては諸々の機能的条件から必要があったんだと理解してほしい。
みなと:笑

松田:でもやっぱ、個人的には全然嬉しくないよ。サイズ大きすぎるし、重いし。ちょっと持ってみてくれへん?
みなと:ほんとだ、耐えられないね。
松田:せやねん、もう重すぎるねんて。しかも持ってること自体が頭悪そうやろ? なんでこんなもん持ち歩かなあかんねん。
みなと:笑
松田:やっぱね、社用くらいの距離感で SE を使ってるのが一番かっこええのよ。SE に、着けるとしたらクリアケース、これが一番クールな iPhone やで。執着がなさそう。

クリアケースなんてどれも一緒だろって思うじゃないですか? このケースめちゃめちゃかっこいいのでぜひ試してください。特に SE 用のやつが見た目のバランスがいいです。
Tech21 っていうイギリスのメーカーのものなんですが、普通のクリアケースが「できるだけ素の姿を尊重しつつ最低限の保護性能を…」みたいな煮え切らん態度とそれに伴う中途半端なスタイリングをしているのに対して、iPhoneの見た目を損なわないように配慮しながらも結構しっかり保護をしにいってることで、2000年代にデジカメが海で装着してたクリアカバーみたいな感じ? ああいう目的に対して過不足のない設計とそこからくる説得力みたいなのが感じられるんです。
この Tech21 以外にも、Belkin とか OTTERBOX とかそれこそ CASETiFY とか、海外のアクセサリーメーカーはやっぱデザインがいいですよね。CASETiFY のレンズ周りの隈取りなんかを見てると思いますが、iPhoneみたいな見た目も中身も繊細で洗練されたものって、我々の日常的な感覚からするとちょっと精密過ぎるからこそ、そこにボールドで無遠慮な意匠が加わることで、何となく馴染みやすくなるところがありますよね。そういう、いい意味で無神経で大胆なデザインは、やっぱフィジカルの強い欧米人の方が得意なのかな。知らんけど。
みなと:いま 13 mini に変えようと思ってるわ。
松田:まあ 13 mini もいいよね、藤原ヒロシだって 13 mini 使ってんねんから。
太郎:そうなんだ。
天下の藤原ヒロシにケチをつけるほど偉いとは思っていませんが、社用文脈でクリアケースが似合う SE とは違って、13 mini にケースはなしじゃないですかね。角張ったスレート型がかっこいい 13 mini なのに、ケースをつけたらエッジに変なアールがついちゃいますから。あと 13 mini のガラスはまじで丈夫なので、保険の意味でのケースの必要もないですね。
松田:てか iPhone X が出たときとかはさ、藤原ヒロシしかり、ミーハー東京代表みたいな界隈は発売日にインスタに写真をあげてたわけやん。でもいつの間にかそれがださくなったよね。
みなと:なるほどね。
松田:まあほんまは SE が一番かっこいいけど、それではしんどいという人のためには 13 mini って選択肢が残ってると思ってるで。
みなと:僕はこれ、本当に何も愛着ないからね。電池さえ減らないでくれたらそれでいいんだけど。
iPhone 13 mini がありならもう少し安い 12 mini でもいいんじゃないかって思うじゃないですか、12 シリーズはバッテリーマネジメントがクソな上にデュアル eSIM もできないんでやめといた方がいいっすよ。
松田:でもさ、まともな人…っていうと勝手な話やけど、でもまともな人は SE を裸で使ってへん?
みなと:そんなことある?
松田:いやほんま、おれの周りのまともな人はみんなそうやで。やっぱみなとの SE の方が絶対にかっこいいよな…おれの 14 Pro と交換してくれへん?
2023年2月19日
Aux Bacchanales 紀尾井町