#2 スカルリングを着けられたら一人前
THE GREAT FROG でデザインやってた人が日本でやってるブランドがこれ / そもそもプラクティカルな必然性なんてないんだから / 「それはちょっとやり過ぎじゃない?」みたいなことは原理的には言えない気がする
松田:これええでしょ?
ももこ:めっちゃいかついね。ドクロ好きなの?
松田:あー…まあ確かに好きやねんけど、「ドクロ好きなんだ」って思われるのはちょっと違うというか、なんか嫌やな。

ももこ:笑 こういうのってカテゴリーだと何になるの?
松田:イギリスでロックやってる人らがつけてる系、かな。
ももこ:そんなのあるの笑
松田:THE GREAT FROG とかが有名やね。クリフ・バートンが身に着けていたとかどうとか、それだけで一生食ってこうとしてる界隈があるねん
ももこ:へー。

あとは CRAZY PIG DESIGNS とか COURTS AND HACKETT とかね。もちろんシルバーの帝王クロムハーツは文句なしにかっこいいんだけれど、ああいうファッションのアニマルスピリッツの具現としてのジュエリーだけじゃなく、紫炎に沈殿しながらもなんとか自分の心に火を灯し続けようとする人のためのジュエリーがあったっていいじゃないですか。この辺りのブランドの役割ってそんな感じです。
松田:で、その THE GREAT FROG でデザインやってた人が日本でやってるブランドがこれ、DOG STATE。
DOG STATE はなんといってもモチーフのリアリティがすごいです。ドメのジュエリーブランドって、ひたすらに原型を作り込んで「それはもう海洋堂でいいじゃないすか…」みたいな気持ちにさせられるところが多いと思うんだけど、DOG STATE のリアルさには、それ以上のある種の禍々しさみたいなのが感じられる気がします。伊勢神宮の空気感、みたいな。
しかも着け心地のよさも抜群です。指の腹にあたる部分にはしっかりとしたボリュームを持たせている一方、デザインの裏側はしっかりと肉抜きしているおかげで、グリップ感もいいし、前後の重量バランスがとれているからデザインがくるくる回って斜め向いちゃうこともありません。
ということで DOG STATE のおすすめを3つ紹介します。

まずは Owl リング、比較的小ぶりなわりに迫力があって素敵です。ラッキーモチーフにしては眼光鋭すぎちゃうかな? Luck ain't even lucky とか言うてね。

Goat リングも最高です。commmon のおしゃれ番長河東が「海外のラッパーが着けてそうやな」という通り、いかにも Greatest of All Time って感じの力強さがあります。

最後はこれ、Unicorn リングなんて他で見たことないですよね。本物のユニコーンと比べてリアルなのかはちょっと知らん。スタートアップ界隈で流行らんかな。
ももこ:てかドクロってそっち向きが正しいんだね。
松田:いや、自分もいつも迷ってる。
ももこ:自分から見えるようにするか、相手から見えるようにするかだよね。
松田:なんかね、生まれて初めてのジュエリーは高校生のときに手に入れたスカルのリングで、それは自分に見える向きに着けててん。でも大学に入ってから、今でもたまに会ってくれる…まあ尊敬するとかではないけど、相手は自分にはないものを持っているし、そこに学ぶことは多いと思っている先輩に、「あれ、松田くんそれ向き逆じゃないの」って言われて。
ももこ:笑
松田:「だってそうじゃないと相手から見えないじゃん?」とか言うねん、大人かよって感じやんね。でもそれ以降は相手に見える向きで着けることが多いかな。
ももこ:へー、逆だと思ってた。私はこのハートのリングは自分向きで着けてる。だってこれ相手に見える向きで着ける人いる? さすがにいないよね。
松田:全然いる気はするけど…笑 それと同じようなモチーフやと、両手でハートを持ってるデザインのクラダリングっていうのがあるねんけど、それは相手に見える向きで着けるのが普通やと思うで。
ももこ:へー。

クラダリングこそTHE GREAT FROG 一択でしょう。手とかハートみたいなウォームなモチーフがドロッとしたテクスチャで表現されているの、超かっこいいです。
松田:てかこれむっちゃ思うねんけどさ、例えば服って…興味がないとしても着ないわけにはいかんやん。
ももこ:うん、まあね。
松田:でもこういうのってさ、別に着けなくてもいいわけよ。
ももこ:アクセサリー類ね。
松田:そう。それにもかかわらず着けるっていうことは、その時点でもうあれやん ? 確かにスカルのリングって「やってんなこいつ」って感じではあるねんけど…
ももこ:やってないと意味がないってこと?
松田:そう、そうそう笑 そもそもプラクティカルな必然性なんてないんだから。
ももこ:着けざるを得ないから着けてるとか、別にないもんね。
松田:そういうもんやからこそ、バチバチにスタンスとって着けるほかないんじゃない?っていう。もちろん自分が着けるのも、必ずしもスカルリングみたいなものばかりではないんだけれど、「それはちょっとやり過ぎじゃない?」みたいなことは原理的には言えない気がする。
ももこ:確かに。
松田:「指輪てお前…」みたいなとこあるやん、実際。それがかっこいいといつ思った?って話。
いかがでしょう、スカルリングを着ける勇気出てきませんかね? 初めてのスカルリングに何を選ぶべきかは非常に難しい問題なのですが、単にシンプルなものはどのブランドも似たり寄ったりなので、むしろバチバチにメッセージが入ってるデザインでフルスイングするのが吉でしょう。毒を食らわば皿までやね。
THE GREAT FROG、CRAZY PIG DESIGNS、 DOG STATEから、それぞれひとつずつご提案します。

3つの中で一番着けやすいのは THE GREAT FROG のこれ、祈るように重ねられた両手と、Pray for Me のメッセージが額に入っています。タトゥーっぽくてかっこいい。ギリギリ普通にファッションって感じです。

CRAZY PIG DESIGNS の Mement Mori Skul Ring、トランスフォーマー ロストエイジの序盤に出てきた悪そうな人が着けていました。Search and Destroy 系の見た目の人にぴったりの選択だと思います。フィジカル弱い人はやめておきましょう。

最後は DOG STATE、繊細にデフォルメされた目のデザイン含めクオリティが高すぎて忘れそうになりますが、モチーフもメッセージも段違いで「やってんな」です。かっこいい自分が着けてるからかっこいいんだよ、そう思える人ならぜひどうぞ。
ももこ:ニットとかだとね。
松田:そうそう、そういう普通の服とは全く性質が違うねん。だからほら…数年前に恵比寿でよく見た服装でさ、スタンスミスにAPCのジーンズにインケースのリュックみたいなのがあったけど、ああいうスタンスをジュエリーでやるのは頭おかしいやん。
ももこ:笑
松田:じゃあもう最初からいらんでしょって話になっちゃう。
ももこ:なんか分かんないけど、トムウッド着けてる人とかどうなんだろう?って。別にトムウッドは悪くないけど。

最近の TOMWOOD は型数多すぎて正直困っちゃいますが、淡い石がのってるシグネットリングがもっともそれらしいんじゃないですか。最近のデザインはインフレしすぎだし、あれ路線なら HATTON LABS の方がいいもんね。
松田:うーん…まあトムウッドは難しい。確かにそういう批判はありそうな一方で、ああいうシンプルなデザインで石のバリエーションがいっぱいあるブランドって他にないから、同種のものが欲しいとなったとき、よりよい選択肢があるわけではないねんな。
ももこ:うんうん。
松田:あとは見方によれば、石がついてる時点でかなりテクスチャがあると言えるとも思っていて、あれはあれで嫌いではない…というか、あれを選ぶしかない条件というのは存在する気がする。
ももこ:なるほどね。
松田:まあ実際に着けてる人らがどうとかは知らん。あとは接着剤がはみ出てたりするのは気になる。
ももこ:へー。
松田:でもまあ、ぼちぼち安いしいいんじゃない? それにドーバーに置いてるし。ドーバーに置いてるものに文句言えるほど偉くはないのよ。
ももこ:確かにね。
2023年1月8日
Aux Bacchanales 紀尾井町